Short Story

キャンバスは青
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僕は雨が好きじゃない。
むしろ嫌いだ。
それは馨も同じだった。
昔から、こういう日は、馨といちゃいちゃして嫌な気分をふきとばしてきてきたのに・・・・・・。

「馨ー、遊ぼー!」
「だから、美術の課題やらなきゃだめなんだって! てか、光もでしょ!」

さっきから、この繰り返し。
あーあ、つまんない。
つーか、美術の課題なんてどうでもいいじゃん。
というのは僕の意見で、馨はいたって真面目に取り組んでいた。

「あ、ごめん。 スカイブルー貸してくんない?」

馨が顔だけをこっちに向けて、言う。

「嫌だー、ないんだったらやめればいいじゃん」

んー、小学生男子が好きな子につっかかる気持ちが分かる。
馨も軽く受け流すかなと思っていたら、馨の顔はけっこう怒っていた。

「もう、いいよ。邪魔ばっかして、協力もしてくれないなら向こう行ってて」

馨はそれだけ言うと、プイッとキャンバスの方に顔を向けた。
僕からは、馨の後姿しか見えない。
そんなに怒ることないじゃん!!
雨が降っていて機嫌が悪いのに、馨までなんだよ!
僕は、自分の絵の具セットから、スカイブルーを持って、馨のキャンバスの前に立った。
そして、絵の具のキャップをはずし、キャンバスに思いっきり絵の具をたらした。
綺麗なガラスのビンが描かれていたところが、真っ青になる。

「はい、貸してあげた」

馨は怒ってるかな、と思って馨を見ると、馨は下を向いて方を震わせていた。
馨のズボンにポツポツと水滴が落ちる。

「あ、かお・・・・・・」

馨は怒りもせず、怒鳴りもせず、涙をボロボロと流していた。
ど、どうしよう・・・・・・。

「馨、ごめ」
「黙って」

馨がうつむいたまま、言う。

「黙って、それで出てって」

馨、と呼ぼうとしたが、声がでない。
自分のしたことに、身体が震える。
僕は・・・・・・なんてことを・・・・・・。

「出てって・・・・・・」

結局、声もかけられず、部屋を後にした。








隣の部屋に移り、椅子に腰掛ける。
隣で馨が泣いていると考えると、胸がつぶれそうだった。
どうしよう、どうしよう・・・・・・
僕の目からも涙がこぼれてくる。









「・・・・・・光?」

こっちの部屋に移って、二十分ぐらいたったとき。
ドアの向こうから馨の声が聞こえてきた。
ガッと椅子から立ち上がる。

「入っていい?」

僕が答える前に、馨は入っていた。
手にはさっきのキャンバスを持っていた。

「見て」

馨が差し出したキャンバスには、スカイブルーのバラが描かれていた。
さっき僕がつけた絵の具が、とても綺麗なバラに変わっていた。

「ね、綺麗でしょ」

馨がヘヘッと笑う。
何で・・・・・・なんで怒らないんだよ。

「馨・・・・・・僕、」
「何も言わないで」

馨が有無を言わせない声で言った。

「僕が、光をほったらかしにしたから・・・・・。僕が悪いのに怒っちゃてごめん」
「ち、違う! あれは僕が悪いんだ! 馨がせっかく頑張ってたのに・・・・・・。ごめんッ!」

馨に頭を下げると、馨の手が、僕のあごをつかんだ。

「じゃあ、さ。キスして。そしたら許してあげる」

馨のその言葉に、涙が出そうになる。
なんでそんなに、僕を許すの・・・・・・。
怒ってよ。

「ね、ひかる・・・・・・。僕、自分に怒ったの。光があんなに僕を愛してたのに、課題なんかに気をとられて。だから、今からは」

馨が言葉を切る。
そして、頬を少し赤らめて言った。

「僕を好きにして」

そういう馨の後ろにあるキャンバスが、僕らに微笑みかけてるように見えた。










――――――――――――キリリク1000
馨って、光のこと大好きなんでしょうね。
だからケンカしてもすぐに謝りそう(そこが可愛い)
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